WGAは約一万二千人の組合員を抱える。映画・テレビの経営側との交渉決裂を受け、米国時間の今月五日から無期限のストに突入した。
「テレビは、すぐに平日夜の人気トーク番組がすべて再放送になってしまった」と話すのは、在ニューヨークのジャーナリスト・北丸雄二さん。毎日ほぼ生に近い形で収録されるトーク番組の裏方には、脚本家が五、六人控えていて、司会者のブラックジョークが許容範囲を逸脱しないよう、綿密な打ち合わせの下で書き下ろしているという。その脚本家がストに入れば番組は作れない。
ストックが数週間分あるドラマは、まだ画面に影響が表れるには至っていないが、日本でも人気の「デスパレートな妻たち」「24」「CSI・科学捜査班」などの制作が止まったとも報じられている。「次回のシーズン開始時期が遅れたり、夏向けの映画が冬に公開されたりするかも」と北丸さんは指摘する。
一九八八年のストは約五カ月間続き、計五億ドルの経済損失が出たとされる。交渉の争点は、ビデオによる利益の分配だったが、北丸さんによると、どれくらいの収益が上がるのか予見できず、組合が折れた結果、ビデオを二十ドルで売って脚本家の取り分は三セントになってしまった。「DVDの利益分配交渉(2001年)でも納得のいく金額が得られなかった。今回のストはその積み残し」なのだという。
米国でディレクターと出演者の二つの組合に入っている放送プロデューサーのデーブ・スペクターさんは「作家も俳優も、米国ではエージェントがいても基本は個人で、プロ意識が高い。エンターテインメントの歴史も古いから、労働運動に対する考え方が違う」と説明。さらに「ストの背景には、ネット配信などメディアを取り巻く状況の変化が早過ぎ、将来が見えないという脚本家の不安がある」とも語る。
「ビデオやDVDよりさらに流通コストが低く、材料費もかけなくて済むネット配信ならば、これまで以上の十分な割り当てがあってしかるべき」と主張するWGA。スト突入以降、街頭デモの中には、俳優らの姿もあった。脚本家らに続いて、今度は俳優や演出家、監督などの団体もネット販売の利益配分を求めてくる−との見方は強い。
「今回のストは、新メディア時代の到来に伴うビジネスモデルの再構築という大きな話」と、北丸さん。デーブさんはこう言う。「このままではアカデミー賞授賞式の面白い司会が見られない。今回の問題はきちんと決着させておかないと影響が広がる」