| ヴァトー『ユピテルとアンティオペ』 カドモスが撒いた竜の歯から生まれたスパルトイの子孫が、王女アンティオペ。 ゼウス好みの大変な美女だったと思われる。 彼女は寝ている間にサテュロス(もしくはアンティオペーの恋人エポーペウス)に扮したゼウスに愛され、そして案の定身ごもった。 アンディオペは独身だった。 厳しい父の怒りを恐れて、アンティオペは子供が生まれる前に恋人のシュキュオーン王エポーペウスの元に逃れ保護された。 セメレを生み出した土地らしく、テバイでは「ゼウス神の子を身ごもった」と言っても誰も信じてはくれない。 そしてエポーペウスとの交際もかねてから父と叔父に反対されていたこともあってか、二人がシキュオンを攻撃するべく軍隊を率いて攻撃してきた。 この時の戦闘はテバイ軍が敗れ、父ニュクテウウスと叔父 リュコスは重傷を負った。 叔父リュコスのほうはまもなく回復したが、父のほうは致命傷だった。 死の間際、ニュクテウスは遺言を残した。 それは、シキュオンを再度攻撃しエポーペウスを殺害し、娘アンティオペを連れ戻して欲しい、との事。 果たしてリュコスはその遺言を実行し、アンティオペをテバイへ連れ戻した。 アンティオペは帰路にある中、ゼウスとの間にできた双子の男の子を出産したが、悲しいかな、その子供たちはキタイロンの山の中で命を落とすようにとリュコスの命令によって捨て子にされた。 そしてアンティオペ自身も 残忍なリュコスの妻ディルケの奴隷にされた。 アンティオペはそれから20年もの間、ディルケによって虐待され、それを耐え忍んだ。 こんな逆境の中、ゼウスはアンティオペを外に連れ出した。 夜中に。 キタイロンの山道を。 一日中、アンティオペは坂道を登り、夕方には山のくぼ地にある羊飼いの小屋にたどり着いた。 そこでアンティオペは二人の羊飼いにギリシャの伝統的なもてなしを受けた。 アンティオペも羊飼いたちもこの時は知らなかったが、出産後生き別れになった実の親子だった。 双子はアムピオンとゼトスと言い、生まれてすぐに山に捨てられたが、その後寒さで凍え死ぬ事もなく、野獣に食われることもなく無事に成長していたのだ。 もちろんこれは天からゼウスが、どのような危害にも遭わないように取り計らっていたからである。 双子は捨てられてまもなく、子供のいない羊飼いに拾われ、大切に育てられていた。 とは言え、アンティオペは二人のことを見ても自分の息子だとは分からなかったし、それは子供たちも同じ。 だから、後にディルケがディオニッソスの儀式を執り行うためのバッカイを引き連れて、逃げたアンティオペを探索に来たときに、双子はあっさりと引き渡してしまった。 恐らく、ディルケはテバイの宮殿に着いたらアンティオペに死に至るほどの拷問を加えるだろう。 ディルケ一行が去ってまもなく、双子の養父である羊飼いが慌てふためいて駆け込んできた。 「おまえたちが保護しようとしなかった女は、……おまえたちの母のアンティオペだぞ」 なぜかゼウスは養父のほうにアンティオペの正体を明かしていた。 そこで双子は慌ててディルケとアンティオペを追いかけた。 双子が彼女らに追いついたのはテバイに到着する寸前だった。 アンティオペがこれまでの苦難を息子たちに語ると、二人の息子たちはディルケの髪を牛の角に結びつけ八つ裂きにしてしまった。 これに対してディルケの夫たるリュコスが剣を抜いて二人に向かったが、若いアムピオンとゼトスのほうが腕っ節が強かったようだ。 二人がリュコスを殺そうとしたまさにその時、現れたのがゼウスの使者のヘルメス。 ヘルメスはリュコスに、テバイの支配権をアンティオペとゼウスの子に譲り、そしてディルケを火葬にした灰をかつてカドモスが竜と争った「アレスの泉」に撒くように、とゼウスが遣わした命令を伝えた。 この事から、以降「ディルケの泉」と呼ばれることになる。 テバイはアンティオペの二人の息子、ゼトスとアムピオンが支配する国となった。 そして、宿命的な「ハルモニアの首飾り」の持ち主になったのは、この後ヘルメスの勧めでアムピオンが結婚したニオベに送られることになる。 |
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