ヘパイストスの物語A
エリクトニオス誕生

   ヴァザーリ「ウルカヌスの鍛冶場」
 ヘパイストスの妻アフロディテは恋愛の女神。
 彼女はいつも誰かに恋をしている。
 しかしヘパイストスは殆ど浮いた話はない。
 そんな彼が珍しく恋をした。
 相手は、自らが父ゼウスの頭をかちわって取り上げた(ようなものでしょう!)義妹アテナ
 知恵と戦いの女神。
 ある日、アテナがヘパイストスの鍛冶場に訪れた。
 女神は新しい武器の発注に訪れたのだった。
 しかし、ヘパイストス。
 アフロディテに捨てられている最中だったせいもあり、欲求不満だったのかアテナに迫った。
 処女の誓いを立てているアテナは逃げ回る。
 足なえだったヘパイストスは女神の敏捷な動きにはついていけない。
 それでも何とか追いついた。
 が、女神の足元を汚しただけだった(何で? なんて野暮な質問はナシです)。
 アテナがその辺に置いてあった羊皮で汚れた部分を拭いて、それを地面に投げ捨てると、何故かその場所が盛り上がりそこから子供が生まれた。
 本当に何故だ!?
 ヘパイストスの精液(あ、言っちゃったよ)が染み込んだ羊皮をアテナが投げ捨てたせいで、大地が身ごもったのだ。
 ギリシャ神話では自然の中にも神や精霊が多くいる。
 そしてその中でも大地母神ガイアは何にでも交わるし、生み出す。
 望んでもいない相手に迫られたアテナだったが、目の前で生まれた子供エレクトニオスを育てる事になった。
 エレクトニオスは大地から生まれた者の証として下半身が蛇だったとか、二本の足の代わりに蛇がついていた、とか身体に蛇が巻きついていたとか言われている。
 説は色々あるが、いずれにせよけったいな姿の子供には違いないようだ。
 最初、アテナはエリクトニオスを箱に入れて、アテナイ王の3人娘に「決して、開けてはいけませんよ」
 と言って預けた(生まれたばかりの子供を箱に入れて成人するまでそのままにしておく、というのは女神の術の一つで、不老不死の効果があるそうです、定かじゃないですけど)。
 しかし、神話では「開けてはいけませんよ」と言われた物は、箱だろうが壷だろうが開けられてしまう(前科者:パンドラペルセポネ、プシュケ)。
 ここでも3人の娘たちは好奇心に勝てず、箱を開けた。
 中から出てきたのは、前述のけったいな子供。
 びっくりして悲鳴をあげる娘たちの声にアテナは気付いた。
 こんな事があってかエリクトニオスはアテナイにあるアテナの神殿で育ち、大人になってからアテナイ王になった。
 馬で引くギリシャ戦車はエリクトニオスが発明した。
 父ヘパイストスについて鍛冶場でも修行していたからだ。

続く
 


ちょっと前(2001年3〜7月)まで上野の国立西洋美術館に来ていたヴァザーリの「ウルカヌスの鍛冶場」。
それにしても、アテナの大胆な鎧姿。
こんな姿で男ばかりの鍛冶場に現れてはヘパイストスじゃなくてもグラっと来ませんか>男性諸君。



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