ヘルメスの物語A
牧神パンとニンフのシュリンクス

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バーン=ジョーンズ「プシュケとパン」
ヘルメスがアルゴスを退治するとき、怪物を眠らせるために語った物語。
牧神パンはヘルメスがドリュオプス王の娘に生ませた、山羊足の子供である。
パンは生まれた時から陽気な性格だったが、その姿の奇怪さから乳母(若しくは母)が逃げ出した。
こんなへんてこな息子を、何故かヘルメスは喜んでオリンポスの神々に紹介した。
神々は内心ではどう思ったかは知らないが、 喜んでパンを迎え、中でもディオニッソスが嬉しがって供に加えた。
長じて彼は、好んで山野を歩き、歌の笛を響かせるようになった。
明るい性格である反面、気難しく怒りっぽいという短所もある牧畜の神だった。
牧神パンが恋したのはニンフのエコーやシュリンクス。
エコーはナルキッソスに片思いした挙句に、こだまになったのは比較的有名な話しだが、パンに言い寄られてつれない仕打ちをしたせいで逆恨みされたと言う物語もある。
ここでヘルメスが語るのは後者のシュリンクスの方。
シュリンクスはアルカディアの近辺を彷徨うニンフだった。
生真面目で内気な性格だったと言う。
彼女自身は女神アルテミスに随行して、弓矢を持ち狩に明け暮れる毎日だった。
ある日、リュカイオンの山からの帰り道で、シュリンクスはパンに出会ってしまった。
パンは今度こそ、シュリンクスに想いのたけを伝えようとしたが、またしても果たせない。
シュリンクスは身を翻して、小道を逃げ始めた。
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アーサー・ハッカー「シュリンクス」
森のニンフの足は速いが、神パンも跳ぶように駆け抜ける。
二人は追いつ追われつ駆け抜けた。
シュリンクスはラードーンの河まで逃げてきた。
ここで彼女は両手を差し伸べ、河に住むニンフに願った。
「私も守って! この姿を変えて!」
パンがシュリンクスを捕らえた。
その瞬間、彼女は葦に変身した。
葦は風にゆれて、低い音をたてた。
パンはしばらくその音に耳を傾けていたが、しばらくして葦を折って長短の管を作るとそれを蝋で固めた。
これがシュリンクス笛。
パンの片思いは、美しい調べとしてかつての恋しい人であったその笛から、美しい調べとして返された。
これがパンとシュリンクスの物語。
笙笛の由来。
続く
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