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モロー「オルペウスの首を運ぶトラキアの娘」
生きているにもかかわらず、とうとうハデス夫妻の前に到着したオルペウス。
オルペウスの奏でる音楽に、ハデスもペルセポネも感動し、そしてオルペウスの「妻を帰して欲しい」という願いを叶えようとした。
二人は「エウリディケはオルペウスの後ろについて歩くが、地上に出るまでの間は背後を振り返ってはいけない」という条件を出し、許した。
オルペウスは喜んで地上へ向かって歩き始めたが、ハデスの居城から地上への道は大変長かった。
オルペウスは何度も振り返って妻の顔を見たいと思ったことか。
そして、あまりにも長い道のりの中、ハデスとペルセポネとの約束を半分疑ってもみたりした。
それを我慢して、どんどん道を進んだ。
そして、ようやく日の明かりが見えた頃。
ここまで来れば大丈夫。
とでも思ったのだろうか。
オルペウスは後ろを振り返ってエウリディケの顔を見た。
そこにいたのは、ひどく悲しげな表情の愛妻。
背後にいたエウリディケの足はまだ冥界にあったのだ。
「何で、何で、振り返ったの? 神の言葉を信じられなかったの?」
あ、と言う間もなく、エウリディケの身体は再び冥界へ引き込まれた。
オルペウスは、追いかけようとしたが、ハデスの条件に従わなかった彼を、川の渡し守カロンは通さなかった。
とぼとぼと一人、オルペウスはトラキアに帰った。
妻を亡くした才能ある音楽家を、トラキアの若い女性が無視できるはずも無かったが、オルペウスの方が亡き妻以外の女性を拒絶した。
悪いことと言うのは重なるようで、冥界から帰った後に創設した秘教会に女性を入れなかったとか、アフロディテがアドニスをペルセポネと争ったときの母カリオペの審判をアフロディテが恨んだためとか(その物語はここ)、とにかくいろいろある。
様々な要因が重なって、ある日ディオニッソスの祭りの狂乱のうちに、オルペウスはトラキアの女たちに八つ裂きにされ、彼の身体はヘブロス河に投じられた。
この後、オルペウスの身体はムーサたちが拾って葬ったと言われるが、首と竪琴だけはレスボス島にまで流れついた。
(なぜだか、モローの描く左の絵では殺した当本人に首と竪琴が拾われている。トラキアの娘の足元にいる亀は音楽の象徴らしい。ギリシャ神話の竪琴って亀で作られているんです)。
オルペウス自身は死んで、冥界に行きそこで妻と再会し、エリュシオンの野で幸せに暮らしている。
今度こそ、妻を振り返って見ても、誰も文句は言わない。
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