エロスの物語A 愛が魂と結ばれるとき 1
ジェラール「アモルとプシュケ」
むかしむかし、ある国に3人の王女がいた。 いずれがあやめかかきつばた。 非常に美しい姫君たちで、その中でも末の姫君、プシュケ(英語名サイキ、和名魂、あるいは精神)の美しさは、愛と美の女神アフロディテをも凌ぐと言われた。 そのような神をないがしろにするような評判を女神が聞き逃すはずは無く、アフロディテの差し金か、哀れなプシュケは姉二人が嫁いだ後も、求婚してくれる男性も現れないまま、年を重ねていった。 こんなに美しく非の打ち所の無い娘なのに、と両親は思ったはずだ。 神託にて伺いをたてると、プシュケは怪物の人身御供とすべし、との回答が得られる始末。 時を同じくして、アフロディテはプシュケの寝所にエロスを差し向ける。 エロスの矢により、姫が身分卑しい男と結ばれる計画が着々と進められていた。 しかし、幸か不幸か。 ベッドの中のプシュケの寝顔にエロスはしばし見とれ、自分の金の矢を誤って自分を刺してしまった。 その後……。 プシュケの両親は泣く泣く娘に花嫁衣裳(若しくは喪服)を着せ、山頂に残した。 (プシュケはギリシャ語で蝶の意味でもあるので、絵画でプシュケが描かれるときは、右のジェラールや、下のブーグローの絵のように周囲に蝶が飛んでいたり、背中に蝶の羽がついていたりする)。
ブーグロー「プシュケの誘拐」 プシュケが不安な気持ちを堪えながら、山の頂で過ごしていると、彼女の身体は突然西風の神ゼピュロスによって持ち上げられた。 ゼピュロスはエロスの元にプシュケを運んだ(本当に毎度のことだけど、ストーリーを無視して、エロスに運ばれています、ブーブローのプシュケ)。 この時、プシュケは自分の行く末が分からなかったに違いない。 相手がエロスだと言うことも分からずに、プシュケは美しい庭園に囲まれた宮殿に運ばれた。 この宮殿では扉はひとりでに開き、姿を見せない召使によってプシュケのあらゆる用事をこなしていった。 そして夜になるとエロスはプシュケの元に訪れるが、この時はまだプシュケはエロスの姿を見たことは無かった。ゼウスとセメレの例を引くまでもなく、命限りある人間の身で神の姿を肉眼視すること破滅を導く。 しかし、エロスはプシュケを労わり、プシュケは幸せに暮らした。
ウォーターハウス「Psyche Opening the Door into Cupid's Garden 」
ひとりでに開くドアを自分で開ける勇気あるプシュケの図……(^^;。