ディオニッソスの物語


     レーニ「Drinking Bucchus」
  ゼウスが腿に縫いつけた胎児は無事に生まれてきた。
 その名は「デイオニッソス(2度生まれた者)」。
 英語ではバッカスという。酒と演劇の神で、エクスタシーの本尊。
 本人も陽気な性格。
 とは言え、ディオニッソスの幼年時代は苦難の連続だった。
 母セメレはディオニッソスが生まれる前に亡くなった。
 ディオニッソスは生まれた直後、異母兄ヘルメスに連れられて、セメレの姉に当たるイノの元で少女として育てられた。
 ところがイノはヘラの呪いによって、海に自分の子ともども身を投げ出してしまった。
 次にディオニッソスが連れられたのは、巨神族アトラスの5人娘(7人説あり)のヒュアデスたち。 信用できるニンフたちだったが、彼女たちもふとした事で星になってしまった(ヒュアデス星団)。
 最後にディオニッソスを育てたのがシレノス。
 ハゲ頭で太鼓腹の山野の精だ。
 そのひょうきんな外見とは裏腹に、大変な知恵者で予言の能力も持っていた。
 こんなシレノスから、ディオニッソスは葡萄の栽培方法とワインの製造法を教わり、それを広めるべく、地中海沿岸からアジアやアフリカを旅して回った。
 ディオニッソスの後には養父で従者のシレノスを始め、酒に酔った好色なサテュロスやあられもない格好の女がついて回った (この女たちを、マニアーとかバッカンテとか言う)。
 ディオニッソスの信者の数は日増しに増えた。
 いつも酒に酔っているたわけた集団を連れて、ディオニッソスは故郷テバイ(カドメイア)に戻ってきた。
 この時のテバイの王はディオニッソスの従兄弟にあたるペンテウス。
 ごくごく常識的なこの王はヨッパライの新興宗教団体をみて吃驚仰天した。
 ペンテウスは断固としてディオニッソスに対決する構えを見せた。
 ところが彼の母アガウエも、アガウエの妹たちもディオニッソスの信者になってしまう。
 堪忍袋の尾が切れたペンテウス。
 彼はバッカンテーに変装して、キタイロンの山で行われているディオニッソスの祭りに乗り込んだ。
 ところが信者たちに見つかってしまう。
 酔って狂ったアガウエは、
「怪物がいる! 退治して」
 と、これまた酔った群衆をけしかける。
 ペンテウスは叔母たちに腕をつかまれ、引き殺されてしまった。
 母が自分の息子を殺してしまったのに気がついたのは素面に戻った時だった。
 
 
 


ルーベンス「泥酔したシレノス
ジェローム「バッカンテ」

続く


 


 

 

 

 

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