アフロディテの物語A
女神の恩恵と禍
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バーン・ジョーンズ「ピグマリオンシリーズ」 愛と美の女神アフロディテが産まれて間も無いころに歩いた島、キュプロス島。 |
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ジェローム「ピグマリオンとガラティア」 冷たい彫刻に命が吹き込まれる。 |
ジャン・ド・クール (Jean de Court) の工房 「アドニスの誕生の描かれた楕円皿」
ピグマリオンとガラティアの孫にあたるキニュラスには美しい娘がいた。
名は「ミュラ」。
アフロディテの恩恵を受けるこの一家は美男美女揃いで、憧れの的でもあった。
ところがミュラの世代になると次第に信仰心が薄れていった。
こともあろうに、本人が言ったか身内が言ったか、諸説があるが「ミュラはアフロディテよりも美しい」と言われるようになる。
アフロディテはこういうのは許さない。
ミュラに「叶わない恋」の罰を与える。
ほどなく、ミュラは恋をした。
自分の父親に恋をした。
近親間の恋愛はタブーである。
恋いの悩みに、ミュラは死のうとまで考える。
自室で首を吊ろうとする所を乳母に見つかって阻止された。
泣く泣く、キニュラスに対する恋心を打ち明けるミュラ。
乳母は驚きながらも、死なせてしまうよりはと、キニュラスを手引きする。
古代ギリシャ人の夜は真っ暗だった(ギリシャ人じゃなくても夜は暗いだろうけど、今みたいに電気が発達していた訳ではないので)。
キニュラスは「名は明かさないけれど、自分を恋い慕う婦人」の元に12夜通い詰める。
とうとう好奇心を押さえられなくて、蝋燭で女の顔を照らした。
目の前にいたのは娘のミュラ。
神をも恐れぬ所業に、キニュラスは動転して、娘を殺そうとする。
ミュラは逃げた。
おなかの中には父キニュラスの子供を宿していた。
9ヶ月逃げて、彼女はもう生きているのもあきてしまう。
かといって死ぬのも怖い。
彼女は祈る。
「生きているものでも、死んでいるものでもないものになりたい」
願いは聞き届けられた。
彼女は一本のよい香りのする「ミュラ」の木になった。
ミュラというのは「ミイラ」の語源で、昔、良い香のするミュラの木は死体の防腐剤として使われた。
ミュラは妊娠したまま木に変身したが、胎内で子供はすくすくと育っていった。
やがて自然に樹皮が破裂して(イノシシが猪突したとも、出産の女神エイレイテュイアが行動を起こしたとも諸説アリ)、中からは美しい男の子が誕生した。
アドニスである。
画像提供たろっこさん。

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