用 語 解 説
参考文献  図説植物用語事典. 清水建美. 八坂書房
        岩波 生物学辞典 第3版. 岩波書店.
        目で見る植物用語集. 石戸忠一. 研成社.
        週刊朝日百科 植物の世界 創刊号 別冊付録 植物用語集. 朝日新聞社.
        週刊 朝日百科 世界の植物 園芸365日と植物用語. 朝日新聞社
        検索入門 野草図鑑 別巻 総さくいん.
あ行
エライオソームelaiosome
 アリを誘引する物質(オレイン酸などの脂肪酸、グルタミン酸などのアミノ酸、ショ糖などの糖)を含んだ種子の付属体のことです。
 学問的には珠皮に由来し、種子が発生時に胎座(たいざ)に付着していたへそと呼ばれる部分にできます。
 このエライオソームの付いた種子をアリが見つけて巣へ運びます。運ばれた種子は、巣の中でエライオソームの部分だけが食べられ、そのあとの種子は、巣の中のゴミ捨て場に捨てられたり、巣の外へ土と一緒に捨てられたりします。いずれにしても種子は発芽能力を失うことなく、運ばれたことになります。アリにとっても、栄養に富むエライオソームを獲得できるので、双方が利益を得ることになり、アリと植物は双利共生の関係にあるといえます。
 このような方法で、種子を散布する植物をアリ散布植物と呼びます。
 日本におけるアリ散布植物としては、スミレ属、イチリンソウ属、フクジュソウ属、ミスミソウ属、キケマン属、クサノオウ属、エンレイソウ属、カタクリ属などに200種類くらいはあると考えられています。
 
  雄しべ
stamen

 花粉を作る花葉を雄しべという。被子植物の雄しべは葯と葯を支える花糸からなる。モクレン科やアケビ科にみられるもっとも原始的な葉状雄しべでは花糸は未分化のままである。
花粉を生成し、収納する部分で、ふつう2個の半葯からなる。
また、半葯は2個の葯室からなるのが普通なので、葯は4個の葯室をもつことが多い。半葯を構成する2個の葯室で、隔壁が破れて連結しているときには、一続きの部屋となるので、半葯のことを葯室と呼ぶ場合もある。
花糸 葯を支える部分。変化が多く、モクレン科では雄しべはリボン状で、葯と花糸との区別が明らかでなく、スイレン属では外側の葉状の雄しべから内側の糸状の雄しべまで形が連続的に変化し、ヒトリシズカでは、3本の合着した花糸の両側下部にだけ半葯がつき、中央の花糸には葯が付かない。
か行
花冠
(花冠)
corolla
 1つの花のすべての花弁を1つのまとまりととらえたとき、花冠という。内花被に相当する。
 それぞれの花弁が独立していれば離弁花冠、花弁同士が合着していれば合弁花冠という。また、放射相称花冠、左右相称花冠という分類もある。


(がく)

calyx
 花の最外輪にある花葉の一つ一つを萼片といい、とよぶときは萼片全部を指す。外花被に相当し、葉の性質がもっともよく残っている場合が多い。単花被花では、存在する花被は萼とみなされるが、セントウソウなどのように萼に相当する構造がなく花冠だけの単花被花もある。
 ホオズキの袋のように花後に成長し、果実の保護などをする例もある。

萼筒
(がくとう)
calyx tube
 サクラ属のように萼片が癒合し、筒形や皿形の部分ができる場合、その部分を萼筒、先に付く裂片を萼裂片という。多くのマメ科植物などでは萼裂片が小さいので萼歯とよぶ。

仮種皮
(かしゅひ)

aril
 種衣ともいう。種子の表面をおおっている特殊な付属物。胚珠(将来種子になる部分)とは異なる珠柄または胎座が発達して種子をおおっている構造となったもの。
イチイ属は液質、スイレン属では膜質、カヤ属では肉質の仮種皮をもつ。キンキエンゴサクでは肉質だが、ミヤマキケマンは膜質である。

花序
(かじょ)
inflorescence
 花は植物の種類ごとに一定の方式に従って配列する。この場合、花の付いた枝全体および花の付き方をあわせて花序という。
花托
(かたく)
torus
 一つの花の中で花葉が付く部分をいう。花床(receptacle)はキク科の頭花のように多数の花を付ける平面的に広がった部分をいう。花托を花床ということもある。長く伸びて軸状の場合は、特に花軸(floral axis、モクレン属)という。

花被
(かひ)

perianth
 花葉の内、雄しべ、心皮(雌しべ)より外側にある構造、すなわち、萼片および花弁をあわせて花被片とよび、その全体を花被とよぶ。ユリ属のように、質や形が似ている場合(同花被花)には、萼片()や花弁(花冠とはいわずに、外花被(片)、内花被(片)とよぶ。
有花被花  
少なくとも内外いずれかの花被がある花
  両花被花  内外の花被がある花
    異花被花 萼と花冠の区別ができる花:ウメ
    同花被花 萼と花冠の区別できない花:ササユリ
     単花被 萼だけがある花:シャクチリソバ
           花冠だけがある花:セントウソウ
無花被花    花被がない花:ヒトリシズカ

花葉
(かよう)
floral leaf
 花を構成する萼片(萼)、花弁(花冠)、雄しべ、心皮(雌しべ)は、それぞれ葉の特殊化したものと考えられ、花葉とよばれる。「花の格好をしているけれど、本来は葉なんだよ」と、覚えておくとよい。

根茎
(こんけい)
rhizome
 地表面から下にある茎を地下茎といい、いろんなタイプがある。
根茎は、地下茎のうちで球茎、塊茎、鱗茎などの特殊茎以外のもの。根のように見えても鱗片葉や普通葉を付け、それらの脱落後には葉痕が残る。
 

さ行
子房の位置  子房と他の花葉との相対的な位置関係は、分類群ごとに一定していて、亜綱・目や科のレベルの分類形質にもなる重要な形質である。
子房上位 子房が他の花葉より上にある場合。
子房下位 花托が子房を取り囲んで融合し、他の花葉が子房の上部にある。
子房周位 サクラ属は子房が萼筒に収まり、萼筒の上縁に花弁や雄しべが付く。子房と萼筒が合着しないので、子房は花弁や雄しべに対して周位であるという。
子房中位 ガクアジサイなどのように、萼筒が子房の中位まで合着している場合。

種枕
(しゅちん)

caruncle
 トウダイグサ属、カタクリ属などの種子のように、種子の先すなわち珠孔付近にある珠皮起源の多肉質の付属物を種枕という。へそ(臍点)の近くにできる付属物はストロフィオール(strophiole)と呼ばれる。しかし、ふつう両者は厳密には区別されず、ともに種枕と呼ばれることが多い。
 種枕や仮種皮がアリの餌となり、種子が散布される場合、これらの種子の付属物はエライオソーム(elaiosome) と呼ばれる。

シュート
(苗条)shoot
 1本の茎と葉を一まとめにしてシュートと呼ぶ。 次の種類がある。
(1)幼芽と主軸:幼芽および幼芽が展開して成長してできた主軸。
(2)側芽と側枝:茎の側方に作られる芽およびその芽が展開し成長してできた枝。
(3)不定芽と不定枝:根や葉に生ずる芽、茎においては側芽の生ずる箇所以外に生ずる芽および不定芽が展開し成長してできた枝。
(4)花芽、花序、花:花序や花を生ずる芽、この芽が展開し成長して生ずる花や花序。

心皮
(しんぴ)
carpel
 被子植物において胚珠を付け雌しべを構成する花葉。雌しべは、1個または複数個の心皮が合着して袋状の構造となり、胚珠を包み込む。
単心皮 1つの雌しべが1つの心皮で作られる場合、単心皮の雌しべとよばれる(例:マメ科、モクレン科、キンポウゲ科)。
多心皮 1つの雌しべが2・3・4・5個の心皮で作られる場合、2心皮(キク科)・3心皮(スミレ科)・4心皮(マイヅルソウ属)・5心皮(リンゴ属)の雌しべといい。多数の心皮で作られる場合は、多心皮の雌しべ(ヨウシュヤマゴボウ)という。

 モクレン科やキンポウゲ科(ミチノクフクジュソウ)などのように、単心皮の雌しべ(単一雌しべ)を不特定多数もつものは多心皮類とよばれ、被子植物の中でも原始的な群と見なされている。

スプリング・エフェメラル は行の春植物(Spring ephemeral)の項をご覧下さい。

総苞
(そうほう)
involucre
 花序の基部にある複数の苞の集合体をいう。総苞をつくる個々の苞を総苞片という。キク科の頭状花序(頭花)では、球形ないし筒型の総苞を有し、総苞片が鱗のように配列していることが多い。ミズバショウなどサトイモ科の植物には花序をおおう1枚の総苞葉があり、特に「仏炎苞」と呼ばれている。ドクダミ属の花序の基部にある4枚の白色の葉片、イチリンソウ属の花序の下に輪生する葉片、トウダイグサ属の花序の杯状体、ゴゼンタチバナ属やヤマボウシ属の花序の下の白色の葉片なども総苞と呼ばれる。

側芽
lateral bud
 シュート頂の側方に新しいシュートをつくる芽を側芽という。種子植物ではふつう側芽は葉腋に腋芽 axillary bud としてつくられる。側芽は成長を始めると、頂端が新しい頂芽、側方には新しい側芽がつくられる。

た行
胎座
(たいざ)
placenta
 子房の中にあって、胚珠の付く子房壁の表面をいう。哺乳動物の胎盤からの類推によって植物でも用いられることになった用語。

托葉
(たくよう)
stipule
 葉の基部付近の茎上または葉柄上に生ずる葉身以外の葉的な器官をいう。
な行
  
は行
  胚珠
(はいしゅ)
ovule
 
 被子植物では雌しべの子房の中にある。心皮内面の組織が隆起して作られた構造で、受精により、その内部で胚(はい)を形成し、成熟して種子となる器官である。珠柄、珠皮、珠心、からなる。珠柄は胚珠が心皮の本体とつながる部分、珠皮は珠心を保護し、種子ができたときには種皮となる組織である。珠心は内部に1個の胚嚢(はいのう)をもち、この胚嚢の中にある卵細胞が受精すると胚ができ、胚珠は1個の種子となる。したがって、雌しべの中(心皮の中)には、種子の数と同数あるいはそれ以上の胚珠があったことになる。カボチャやスイカの子房が大きいのは、その中に多数の胚珠をもっているためにかさばっているからである。

  春植物
(
Spring ephemeral)


 周りの木々が葉を開く前の早春に茎や葉を地上に出して花を開き光合成を行い、木の葉で陰になる初夏には地上部が枯れてしまい、地下の根茎や種子で後の季節をひっそりと暮らす植物を指す生態学的な言葉です。そのはかなさ故に「Spring ephemeral」とも呼ばれます。ephemeral(エフェメラル)とは、カゲロウなどのように、現れてすぐ消える短命な生き物のことをいい、カゲロウの学名の一部(Ephemeron)にもなっているそうであります。春の日の夢とでもいうような生物を指す言葉です。
 アズマイチゲ、ヤマブキソウ、カタクリ、アマナ、フクジュソウ、セツブンソウ、コバイモ、エンゴサクなども、春植物です。
 これらの
春植物を見て、何か共通点があることに気が付かれましたか。どの植物も柔らかですね。ちぎるとすぐにフニャフニャとしおれてしまいます(実際にちぎらなくてもいいんですよ。そんな感じがするでしょう。)。枯れる場合にも、ほとんど溶けるように、まさに消滅するような感じで枯れます。繊維質がほとんど残らないのです。芽吹いてからほんの1〜2か月の間に、花を咲かせて種子を作り、来年の準備をして枯れていかねばなりません。繊維組織にコストをかけるゆとりがないのでしょう。水分を細胞内にみなぎらせて、その膨圧で姿勢を保っているのです。ある調査によれば、春植物は最も多汁質(地上部の約9割が水)で、かつ最もしおれやすい植物であると言われます。
〔参考文献 プランタ 第38号 1995 研成社〕 

 なお、皆さんご存じのスハマソウ、ミスミソウなどは春に花咲く植物ではありますが、初夏に向かって枯れるということはなく、年中葉を付けていますから、「春植物 Spring ephemeral」ではありません。「春植物」と「春に花咲く植物」とは大違いなのです。かなり植物に詳しい人でも誤解をしている場合がありますのでご注意を。
キクザキ
イチゲ
ヤマブキソウ ミチノク
フクジュソウ
コシノコバイモ

(ほう)
bract
 一つの花または花序を抱く小形の特殊化した葉を「苞」または「苞葉」という。その位置や形によって、総苞、苞、小苞、苞鞘、苞穎、苞鱗などに分けられる。
ま行
むかごpropagule  零余子(むかご)は、軸上に生じた芽がやがてその主軸との連絡を断って別の個体の出発点となるものに対する幾分通俗的な名称。親の栄養体から分離して無性的に繁殖する細胞または小さな多細胞体を一般に無性芽brood bodyといい、むかごは無性芽の一種といえる。
 むかごのうち、葉原基が肉質となり幼芽を取り巻いたものは鱗芽 bulbil (例:オニユリ、コモチマンネングサ)、茎が肥大し球状になったものは肉芽 brood (例:ヤマノイモ)という。
雌しべ
pistil
 心皮で作られた雌性の生殖器官である。1個の心皮から作られる場合は、単一雌しべといい、複数の心皮から作られる場合は複合雌しべという。
 典型的な雌しべは、柱頭・花柱・子房からなる。
柱頭 雌しべの先端で、受粉を行う場所であり、粘液を分泌したり、突起があったりして、受粉しやすい仕組みになっている。
花柱 柱頭と子房をつなぐ部分で、柱状のものが多い。
子房 雌しべの胚珠を容れる部分。子房を囲む部分の心皮は子房壁という。子房ないの胚珠を容れる部屋を子房室という。単一心皮でできた子房では、1室であるが、複数の心皮からなる場合には、必ずしも心皮数と一致はしない。例えば、ヤナギ科やキク科の子房は心皮2個からなる複合子房であるが、子房室は1個である。
や行
ら行
わ行
      
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