FILE85  ヒロハフウリンホオズキ Physalis angulata L.                             (ナス科)
 
図1 花は葉の上にちょこんと乗った形で横向きに咲くことが多い。(2002年8月25日)

図2 雌しべの短い花(このタイプの花がほとんどだ) 図3 雌しべの長い花
図4 雌しべの長い花の部分拡大(柱頭が雄しべより外に出ている。) 図5 花の側面観。萼の大きさは、開花時で、幅約3mm、長さ約4.5mm、萼裂片の長さは約2.5mm。花冠の直径約10.5mm。こぢんまりとした花だ。

今年(平成14年)、河北潟干拓地の調査をしていて初めて見ました。調査メンバーの誰もが初めて見る植物でした。小さい風鈴のような形の花を多数付けていました。帰宅後、日本帰化植物写真図鑑(全国農村教育協会)で調べたところヒロハフウリンホオズキに近いと判断できました。しかし、疑問の点もいくつかありましたので、帰化植物MLでお尋ねをいたしました。
 


 
 日本帰化植物写真図鑑ではヒロハフウリンホオズキ(Physalis angulata L.)は、「基部が濃紫色になる淡黄色の花を単生」とありますが、本品は「基部が濃紫色」ではありません
  『この点で、ヒロハフウリンホオズキらしくない
 

 
 日本の野生植物(平凡社)や原色日本帰化植物図鑑(保育社)では、上記と同じPhysalis angulata L. の学名で「センナリホオズキ」が載っています。しかし、「萼は……10稜があって、熟しても緑色である。」(日本の野生植物)、「花冠の底部は紫黒色」(両書とも)と記載されており、本品はセンナリホオズキとは異なるようです。
 以上の点を帰化植物MLにお尋ねしたところ、勝山さん、植村さんから、丁寧な回答がありました。
要約しますと、

過去に、学名の当て違いがあったということです。
従来、原色日本帰化植物図鑑(保育社)を含めて、センナリホオズキ (Physalis angulata L.) とされてきた植物は、Physalis pubescens L.であることが明らかになりました。
 そこで、 センナリホオズキの学名を Physalis pubescens L.としました。
 そして、
Physalis angulata L. には、新しく和名が必要になり、ヒロハフウリンホオズキ としたものです。

 次に、1のヒロハフウリンホオズキらしくない点については、勝山さん、植村さんから、いずれも 「ヒロハフウリンホオズキの花冠内面には、淡褐色の斑紋が出ることはあるが、センナリホオズキのような濃紫色の斑があるものは見たことがない。」と御教示いただきました。
 結論として、日本帰化植物写真図鑑でヒロハフウリンホオズキの「基部が濃紫色になる淡黄色の花を単生」という記載が正確ではないということが判明しました。

図6 花冠にある淡褐色の斑。斑の部分は内面に向かって膨らみ、その下部に蜜が出ている。

図7 斑の部分には毛が生えていて、その毛に守られるように、蜜が分泌されている。

花冠を切り開いて内部を見ると、褐色の斑の部分と、その下方の蜜分泌域の周りに毛が生えている。合目的的に考えると、蜜がこぼれないような工夫をしているように思える。

図8 花後、花柄の長さ18mm、萼の直径22mmほどの小形のホオズキができてくる。紫色を帯びた10本の筋(稜)が特徴だ。

図9 萼はホオズキと違い褐色に熟する。 図10 萼をめくると、中には緑色の果実が見られる。

図11 大豆畑の雑草になっている。

河北潟では大豆畑の雑草として畝の間や大豆の株間にはびこっています。

ホオズキのように赤くは熟さず、図9の様な色合いで止まります。
食用になるということで食べてみましたが、あまり美味とはいえませんでした。

   

最後に、神奈川県植物誌2001から、ホオズキ属の検索表の一部を引用して、本品を当てはめてみます。
詳しくは神奈川県植物誌2001をご覧下さい。
赤字は写真判定による本品のデータです。

茎はほとんど分枝せず,萼は果時に赤くなる
全体に毛が多い ヨウシュホオズキ
全体にほとんど無毛 ホオズキ
茎はよく分枝し,萼は果時に緑色または黄色
花時の萼裂片は長さよりも幅が広い3角形で先端はとがらない.果時の萼の稜上には突起がある.在来の野生種 ヤマホオズキ
花時の萼裂片は幅よりも長さが長い3角形で先は尖る.果時の萼の稜上に突起はない.帰化種
花冠は小さく,直径10mm以下[10.5mm].葯は長さ1〜2mm
全体に無毛または若い部分にのみ毛がある
葉は縁に尖った鋸歯があり,花冠は中央が多少褐色を帯びることがあるが,顕著な濃紫色の斑はない.全体に無毛,またはわずかに毛がある程度
葉は卵形.花柄は花時に5〜15mm,果時に20mm程度[18mm].花時の萼は長さ4〜5mm[4.5mm],裂片は長さ2〜2.5mm[2.5mm].葯は長さ約2mm ヒロハフウリンホオズキ
葉は披針形〜卵状披針形.花柄は花時に20〜30mm,果時に30〜50mm.花時の萼は長さ2〜3mm,裂片は長さ約1mm.葯は長さ1〜1.5mm
葉は卵状披針形.花冠は長さ6〜8mm
アイフウリンホオズキ
葉は披針形.花冠は長さ4〜5mm
ホソバフウリンホオズキ
葉は全縁または先の鈍い鋸歯があり,ときに腺毛がまじる.花冠中央に顕著な濃紫色の斑がある センナリホオズキ

参考文献
清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七.2001.日本帰化植物写真図鑑.全国農村教育協会.
長田武正.1976.原色日本帰化植物図鑑.保育社.
山崎 敬.1981.日本の野生植物 V ナス科.平凡社.
山輝男,図:佐々木あや子・勝山輝男.2001.神奈川県植物誌2001 ナス科.神奈川県立生命の星・地球博物館(神奈川県植物誌調査会編).

花模様