| FILE44 ヤドリギ Viscum album L. subsp. coloratum Komarov |
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| ヤドリギ科 Loranthaceae | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギは、北海道から九州まで広く分布します。石川県でも方々で見られますが、あまり多くはありません。しかも木の高いところに付いていることが多く、観察は困難です。 白山麓では、ミズナラやブナに寄生しているのを見ることができます。春早く訪れると、枝が落ちていることがあります。そういう枝では、果実と同時に花を見ることもできます。 果実は晩秋に熟し、直径約6〜8mmの球形で半透明の黄白色です。ヒレンジャクなどの鳥が好んで食べるということですが、種子を取り巻く粘液質は、消化管を通っても粘着性が失われないので、種子を含んだ粘着性のある糞となり、木の幹や枝に貼り付くことによって分布を広げます(NHKによって、そのようすが記録されています。)。 ヨーロッパではセイヨウヤドリギですが、クリスマスのリースなどに利用されています。落葉樹が葉を落としている冬に、ヤドリギだけが、地に根も付けないで、青々とした葉をつけていることに不思議な生命力を感じ、神聖視されているのでしょう。宗教的な意味もあるようですが、ここでは省略いたします。 日本でも古くから人々に知られており、古名で「保与」(ホヨ)として、万葉集にも出ています。 あしひきの山の木末のほよ取りて かざしつらくは千年(ちとせ)寿(ほ)くとそ 大伴家持(巻18-4136) 【山の木の梢のヤドリギを取って髪にさしたのは、いつまでも限りなく無事であるようにと、祝い願う気持ちからなのだ】。(万葉植物事典より引用) 源氏物語の巻名に「宿木」があり、枕草子でも37に「宿り木といふ名、いとあはれなり」と表現されています。 |
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| 図1 ミズナラの枝にヤドリギがたくさん寄生している。(2004.4.29) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図2 ミズナラの枝に寄生したヤドリギ(2004.4.29) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 図3 ブナの幹に寄生したヤドリギ。品種のアカミヤドリギが混ざっている。(2007.11.19) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギは寄生木や宿木とも書きます。名は体を表すというように、寄生性の樹木です。 葉緑体があり光合成をすることができますので、FILE38のツクバネ同様に、半寄生の生活です。エノキ、ケヤキ、ブナ、ミズナラ、クリ、サクラ、ナシなどの落葉樹に寄生する常緑の小低木で、冬でも青々として生命力を感じます。ヤドリギを探すのは、宿主(または寄主)の落葉樹が葉を落とした冬が適しています。一見、何かの鳥の巣を思わせる大きなまるい塊になって、宿主の木の幹や枝に付いているので、あればすぐ見つかります。 |
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| 図4 ヤドリギより先の方の枝(幹)が失われている。(2004.4.29) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図5 ヤドリギの寄生した箇所はこぶのようになる。このように大きな瘤になったときは、多数のヤドリギが寄生している。(2004.4.29) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 葉緑体をもっているので光合成はできますが、なにしろ、木の幹に生えているので、水分や無機塩類などは、宿主の植物から吸収しなければ生きていけません。このような生活を、半寄生と言います。寄生されたところより先は、根からの栄養分が十分送られなくなり、細くなったり、弱ったりして、図4のように折れてしまっていることもあります。また、図5のように寄生された箇所が瘤のように大きく膨らむことがしばしば見られます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図6 ブナに寄生したヤドリギ(1998.8.29) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図7 ヤドリギの茎の先端部。雄株(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギの茎は、多くの場合、二又に枝分かれしつつ、1年に1節ずつ伸びていくので、その節の数を数えると樹齢が分かります。葉はプロペラのように対生し、古い葉は落ちてしまい、茎の先端部だけに残り、茎の先端に花序がつきます。雌雄異株で、花序には1〜3個の花がつきますが、図7の場合は、雄花がそれぞれの花序に1個しか付いていませんでした。雄花の下に見える小さな緑の芽は、これから伸びようとする新しい枝の始まりです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図8 ヤドリギの雄花。4枚の花被からできている。(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図9 ヤドリギの雄花の縦断面。葯は花被の内側に張り付いている。(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図10 ヤドリギの雄花。極めて短い花糸が、花被の内面下部に付いている。(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図13 ヤドリギの雌花。雌花序も1〜3個の花からできている。(2005.05.06) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図14 ヤドリギの雌花。4個の花被に囲まれて、雌しべの柱頭が見える。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図15 ヤドリギの雌花。手前の花被片を1枚外した。花被と花柱の間には蜜が分泌されている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図16 ヤドリギの果実。雌花序も1〜3個の花からできている。(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図17 ヤドリギの果実。4個の褐色部分は、花被裂片の落ちた跡。中央の褐色部分は、柱頭の跡。(2005.5.6) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| ヤドリギの種子では、果実のうちから根のようなものが見えています。秋の内は小さな突起に過ぎないのですが(図35)、春になるとかなり伸びています(図22)。これは、果実の外からでも透けて見えるもので、図44以降で説明しますが、これが2個あるものは、胚も2個、すなわち2個の種子からなる果実で、3個あるものは3個の種子からなる果実です。 では、この根のように見えるものは何かということになりますが、図説植物用語事典(p.246)によりますと、「種子は発芽しても主根は伸長せず、まず、胚軸の下部が吸盤状に変化し、固着する。ついで、そこから不定根を生じて樹皮内に進入し、(後略)」とありますから、「胚軸」と呼ぶべきものです。(2008年1月12日 のこさんのアドバイスにより追加) |
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| 図22 ヤドリギの種子(2005年5月8日)。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| なかなか さんの観察によると(ここを参照)、果実の中は、果肉、種子の周りの粘着質、白い筋のような部分と種子本体からなっているようです。図22で長く垂れているのが「白い筋のような部分」で、種子の周りにあるのが「粘着質」部分です。 ヤドリギの果実を食べた鳥の総排泄口から、「白い筋のような部分」で垂れ下がり、運良く幹や枝に触れると、「粘着質」部分で宿主に貼り付いて寄生を始めるのです。 |
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| 図23 4月29日に果実の一つをミズナラの幹に貼り付けたのを、5月6日に撮影した。何とか付着し続けているようだ。(2005.5.6) 2007年に観察に行った時点では、見つからなかった。 |
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| 図24 ヤドリギの胚軸の先端部。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 5月に見たヤドリギの種子は、果実の中で、早くも胚軸を伸ばしていました。吸盤状のこの胚軸で宿主にとりつき、不定根を伸ばして寄生します。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図25 5月6日に採取した種子のいくつかをスライドガラスに付着させた。5月30日になっても元気だ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図26 水分のないスライドガラスの上で、7月11日になっても、なお、元気だ。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図27 10月5日には完全に枯れてしまっていた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| 5月6日に採取した種子のいくつかをスライドガラスに付着させてみました。5月30日になっても元気でした。図26のように2ヶ月経っても未だ緑を保ち、その後もしばらく元気でした。何時枯れたのかは分かりませんが、10月5日に見たときは、さすがに完全に枯れてしまっていました。 それにしましても生命力の強さには驚きました。宿主の樹皮についてから、寄生根を宿主の維管束まで伸ばして、栄養分を吸収できるまでには、相当の月日が必要なんでしょう。それまでの間、生き抜けるよう、強い生命力を保っているのです。驚異の植物です。 |
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| 5月初旬、果実の中ですでに発芽していたヤドリギの種子のいくつかを庭のヤマボウシ・ハウチワカエデ・エゴノキに付着させました。ほとんどは落ちたり、途中で枯れたりし、活着するのはなかなか難しそうでしたが、いくつかは生き残りました。もっとも全部が寄生に成功すれば、ヤドリギだらけになってしまって、宿主も枯れて共倒れになるでしょうから、やむを得ません。 時々写真にとって観察しましたが、この1年間は、ほとんど変化が見られませんでした。外見では変化が無くても、おそらく、宿主の中へ寄生根を差し込んでいるのでしょうが、確かめる術(すべ)はありません。 その後もほとんど成長が見られませんでした。2年後の2007年12月26日に撮影した図29を見ても、この2年間に全く成長していません。ヤマボウシやエゴノキは、本来の宿主ではないので成長しないのかも知れません。かといって、枯れたようにも見えません。宿主の中へ寄生根を差し込んでいるのでしょうか。不思議な生命力をもつ植物です。 |
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| ヤドリギの粘着について | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギの種子は、木の幹や枝に貼り付くことによって分布を広げますが、貼り付きの仕組みはどのようになっているのでしょうか。まだ謎の部分が多いのですが、観ていくことにしましょう。 なかなかさんの「ヤドリギの果実」というFILE(ここ)を後追いしながら観察してみました。後追いというのは、観察ポイントがはっきりして楽です。 |
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| 図31 果皮を通して見える白い筋が、緑の線で囲った種子の平べったい面と直交する方向に付いている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図32 果皮を剥がすと、白い筋がはっきり見えてくる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図33 果皮を破って、中身を取り出し、どろっとした果肉を剥がすと、「白い筋」が種子の「へそ」のあたりから出ていることが分かる。右は、種子の両側にある「白い筋」の片方を持ち上げてみたもの。この作業の段階で、「白い筋」から、細い糸が伸びてきた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図34 果実を横断すると「白い筋」が、右の図の青線で示したように、種子の平べったい面と直交する方向に付いていることがよく分かる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギの果実を外から見ると、「白い筋」が果皮を通しておぼろげに見えます。果肉も「白い筋」も半透明(白濁)なので写真に捉えるのは難しいのですが、何とかお分かり頂けますでしょうか(図31)。果皮を剥がすと多少は見やすくなり(図32)、果実を横断すると内部の様子が分かりやすくなります(図34)。「白い筋」は、種子の平べったい面と直交する方向に付いていることがよく分かります。 この「白い筋」は、種子の「へそ」の近くから伸びている粘性の高い構造で、種子が図22・38のように長い糸でぶら下がるのは、この「白い筋」から糸が繰り出されることによるもののようです。 |
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| 図35 種子は「へそ」のあたりにある2本の「白い筋」から伸びた糸によってぶら下がる。この時期、まだ胚軸はほとんど伸び出ていない(2007年12月29日)。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図36 「白い筋」の着点付近の拡大図。 |
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| 図37 「白い筋」から糸が伸びている様子。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図38 本来、糸は2束であるが、簡単に癒着して1束となってしまう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ヤドリギの果実には、少なくとも3種類の「粘液質」があると考えています。
(1)は、「白い筋」で分断されていますから、果実をつぶすと、大きな2個の塊となって種子からはずれてきます。主としてこの部分が鳥の餌になっているのでしょう。(2)と(3)は、鳥によっては消化されずに排泄されて、新たな寄生場所を得る役目をもつのでしょう。特に(2)が長く垂れ下がるのには大きな意味があります。もし、単に排泄されるだけなら、ほとんどの種子は地面に落ちてしまうでしょうが、粘着性の強い糸でぶら下がっていれば、その糸が宿主の枝や幹に触れて、貼り付く可能性が高くなります。納豆の糸のように良く伸びます。そして(3)は宿主に強く貼り付く、粘着性の高い成分で、図36で、種子の周りを取り巻いている透明な層が(3)であろうと考えています。 |
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| 図40 果実の横断切片を作ってみると、(1)(2)(3)の層の違いがはっきり分かる。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
園芸植物大事典には、「花は、花床が盛り上がって花の基部を包む萼状の部分になり、それに花被片がつく。外果皮のように見えるのはじつは花の基部を取り巻いていた花床が変化したものである。またこの花床の内面に粘液質の部分があり、この粘液で種子を寄主に付着させ、そこで発芽、寄生を開始する。」と記述されています。 ここからは、私の想像です。本当は仮説といいたいところですが、具体的な根拠に欠けるので、あえて、想像といういことにしておきます。 すなわち、「花床が変化して外果皮を作ると共に、内側に(1)の粘液質を作ります。(2)はかなりしっかりと種子にくっついています。へその辺りの細胞で作られた、例えば、納豆のような特殊なタンパク質系の物質かも知れません。良く伸びる性質の糸を出します。(3)は、種子の周りにある白い網目模様(私は維管束の一種ではないかと考えています)から分泌された粘液質。」だろうというのが私の想像です。
世の中を惑わすふらちな想像かも知れません。ご存知の方から御教示を頂ければさいわいです。 |
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| 図説植物用語事典に、ヤドリギ科の解説として、「珠皮がなく、胚珠自体が退化し、種皮をもたない。」という意味のことが書いてあります。(注:胚珠の珠心を保護する組織である珠皮は、種子になったときには種皮となりますから、珠皮がないことは種皮がないことに通じます。)。これだけでは言葉足らずでよく分かりません。 園芸植物大事典には、「子房は1室で、1〜数個の胚珠がある。胚珠は珠皮も珠心も退化していて、胚嚢(はいのう)だけが胎座に埋もれている。」とあります。かなり変わった胚珠をもつ植物です。 |
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| さて、ここまでで、一般の方には耳慣れない専門用語がたくさん出てきましたので、少し解説をいたします。 雌しべの子房には、将来種子となる「胚珠」というものが入っています。1個の胚珠が1個の種子になりますから、それぞれの花には、少なくとも種子の数だけの胚珠が含まれていたはずです。カボチャやスイカの子房が大きいのは、その中に多数の胚珠をもっているためにかさばっているからです。「胚珠」は、珠柄、珠皮、珠心からなります。珠柄は胚珠本体と胎座をつなく部分です。胎座とは、子房の中にあって、胚珠の付く子房壁の表面をいいます。哺乳動物の胎盤からの類推によって植物でも用いられることになった用語です。珠皮は、珠心を保護する組織で、被子植物では、2枚または1枚あるものですが、ヤドリギ科の植物にはそれがありません。珠心は、その中に胚嚢母細胞をもち、胚嚢母細胞が減数分裂をすると、胚嚢細胞を経て胚嚢ができます。胚嚢はいくつかの細胞からできており、その中の1個が卵細胞です。卵細胞が受精をすると、次の世代の「胚」となり、「胚珠」は種子となります。ヤドリギ科の植物では、珠皮も珠心も退化しているので、普通の植物とはとても趣が異なります。 |
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| ヤドリギの種子を縦断してみますと(図44)、胚(はい:ヤドリギの赤ちゃん)が見えます。胚の周囲の組織は胚乳(はいにゅう:種子の発芽に必要な栄養分を蓄えている組織)で、ヤドリギでは「葉緑体のあるデンプン質の胚乳である」(植物の世界)ということです。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図44 種子の縦断面。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図45 胚乳部分にヨードチンキを垂らしたら、濃く染まり、デンプンの含まれていることが分かった。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ところで、図21・図22・図26のように1個の果実の中で、胚軸が2個見えることが良くあります。これはいったい、どういうことなのでしょうか。「胚嚢(はいのう)だけが胎座に埋もれている」ということですから、1個の果実の中で育った複数の胚珠(もしくは胚嚢)が、それぞれ種皮のない種子となり、同居しているのに違いありません。植物の世界(朝日新聞社)には、「子房の内部には基部に1個から数個の胚珠がある。果実は花床に種子が包まれ、中には1(まれに2)個の種子がある。」となっています。良く探せば、種子の数がもっと多い果実もあるはずです。ようやく、3個の種子をもつ果実を数個、見つけることができました(図48)。植物の世界では上記のように説明されていますが、別の可能性もあります。すなわち、胚珠が複数あるのではなく、胚嚢だけが複数できたという可能性もあります。このことについての論述は後日にいたしましょう。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図46 2個の胚からなる種子。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図47 2個の胚、すなわち2個の種子がくっついて、1個の種子のように見えている。(図46の種子の縦断面) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図48 3個の胚、すなわち3個の種子がくっついて、1個の種子のように見えている果実。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図49 3個の胚、すなわち3個の種子がくっついて、1個の種子のように見えているものの粘液質を取り除いた。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図50 図49の種子の縦断面。3個の胚が見える。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図51 3個の胚、2個の胚、1個の胚をもつ種子を並べた。スケールは1/2mm。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図52 3個の胚は、狭い種子(胚乳)の中に埋まっているため、この例では少し癒着を起こしていた。 このような3個の胚をもつ種子はかなり珍しい。 |
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| 図53 枝の断面。表面はクチクラで凸凹し、中の細胞には葉緑体がある。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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| 図54 葉の表の表面。気孔がたくさん見えている。 |
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| 図55 葉の裏の表面。気孔がたくさん見えている。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
| ヤドリギに触れると、ザラザラした感触ですが、それは、表皮を守るクチクラ層が厚く、凸凹しているからです。ヤドリギは全体が緑色をしていますが、葉緑体で光合成を行うことができるからです。葉を顕微鏡で見ますと、表にも裏にも気孔があり、分布量には差がないように見えます。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
文献
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