FILE26 ハマゴウ  Vitex rotundifolia L. fil.
     (Vervenaceae  クマツヅラ科)


学名は日本の野生植物 木本2 平凡社 によりました。

図2 まれに桃色の花も見られる。
図1 淡紫色の花が多い。 図3 雄しべも雌しべも花の外へ突き出ている。

 海岸の砂地に生える小低木で、夏日、紫色から桃色まで、同じ浜辺でも様々な色の花を付けます。花冠は上下2唇に分かれ、上唇は2裂し、下唇は3裂します。雄しべは4本。雌しべの柱頭は2裂します。

図4 満開のハマゴウ群落(2004年8月3日)。このような光景に出会うことはなかなか難しい。

図5 浜へ枝を伸ばすハマゴウ

  海岸砂丘で、先駆的に、先へ先へと枝を伸ばして成長するクマツヅラ科の木本です。
 学名の Vitex は「結ぶ vieo」 で、この植物の枝で籠を編んだことに由来し、rotundifolia は「円形の葉の」の意味だそうです。【木村陽二郎監修. 図説花と樹の大事典.柏書房】

 
石川県加賀海岸の約4kmの砂丘を埋めるハマゴウ群落は、じつに見事なものです。
 昭和58年5月、第34回全国植樹祭の折りに石川県へ行幸された昭和天皇を、私の恩師である里見信生先生が、ここ加賀海岸へ御案内し、ハマゴウなどについてご説明申し上げました。そのとき、昭和天皇が「ここのハマゴウ群落はすばらしい」と感想を述べられた、と聞いております。

図6 砂に埋まりつつあるお立ち台(1999年9月) 図7 2004年6月 木製の標柱は完全に埋没してしまった。

 その後、昭和天皇が立たれた場所には、花崗岩製の「お立ち台」が建てられ、その横に木製の標柱「第三十四回全国植樹祭」も立てられました。
 16年経った平成11年(1999年)には、図6のように半ば以上砂に埋もれていました。平成16年(2004年)6月には、図7のように標柱は完全に砂に埋まり、お立ち台も柱だけになってしまいました。砂丘地の砂の堆積(被砂)の激しさを物語る材料として載せておきます。

図8 砂から姿を現したハマゴウの幹

 図鑑類には「茎は長く横にはい、枝は直立または斜めに立って、高さ30〜60cm」とか「茎は砂中を長くはい、枝は直立または斜上し、高さ30〜70cm」と記載されています。
 確かに、図4や図5をご覧頂くと、そのとおりです。
 ところが場所によると、図8のような光景が見られます。龍がのたくったような太い幹があって、枝がたくさん出ています。
どうしてこのような姿になったのでしょうか。

 図6や図7で明らかなように、砂丘表面の砂の堆積はかなりなものです。砂丘上の植物は、のんびり生きているように見えても、絶え間ない砂との戦いがあるのです。砂に埋められても埋められても、這い上がらなければ、「標柱」のように埋められてしまうのです。砂丘に生きているということは、まさに這い上がりの人生(?)だったのです。
 ハマゴウもその大本の幹が、砂に埋められて、枝が伸び広がっていたものです。
 何かの弾みで、風道が変わって、砂が吹き飛ばされてしまい、隠れていた幹が露出してしまったという訳です。

図9 幹の露出したハマゴウ

図10 太い幹は1m以上も地上へ顔を出した。

図11 ハマゴウの樹皮

図12 砂から露出したハマゴウの幹(2004年11月18日)

 図9〜12のように、砂が吹き飛ばされると、砂に隠れていた幹が現れて不思議なオブジェを見せることになります。見方を変えると、これがハマゴウの本来の姿なのかも知れませんね。
 もし、この海岸で、徹底的に砂が飛ばされてしまうと、奇妙なハマゴウの林が出現することになります。もちろんさらに進めば根が現れて、乾燥して枯れてしまいます。

 砂丘地の植物は、
  1 砂浜という環境からくる乾燥
  2 被砂による埋没
  3 砂が無くなってしまうことによる根の露出
  4 塩風
 という過酷な条件に耐えながら生きている植物なのです。

図13 加賀海岸のハマゴウには、もう一つの大敵「ネナシカズラ」があります。

図14 寄生植物ネナシカズラで、がんじがらめにされたハマゴウ。

図15 加賀海岸の夏。茶色く見えているものがすべてネナシカズラ。

 加賀海岸のハマゴウには、もう一つの大敵「ネナシカズラ」があります。図13・図14・図15のように、ハマゴウを広くおおって、栄養分を吸い取っています。

ネナシカズラについての詳しい解説は(ここ)にあります。

 ネナシカズラは、夏には赤茶けて見えますが(図15)、11月にはネナシカズラが枯れてしまいますので、黒く見えてきます(図16)。

図16 枯れたネナシカズラ。11月。

 これほどネナシカズラがはびこると、ハマゴウの生育にも相当の影響があるはずです。すなわち、
 ネナシカズラが繁栄すると、ハマゴウが衰え、
 ハマゴウが衰えると、ネナシカズラが衰え、
 ネナシカズラが衰えると、ハマゴウが元気を盛り返す
 ハマゴウが元気になり、ネナシカズラも栄える
   というイタチごっこが見られるはずですが、ネナシカズラが隙間無く寄生しているのではなく、寄生地をずらせている可能性があり、そうなると、漠然と景色を眺めているだけでは、先の関係が分かりにくくなるので、場所をキッチリと固定して、今年寄生されたハマゴウが来年どうであったかということを「ハマゴウの個体識別」によって調べなければなりません。今後の課題です。

図17 アメリカネナシカズラの寄生も多い。(2004年8月26日)

図18 葉の裏に密生する毛
図19 果実。萼に包まれている。

図20 果実の横断面
図21 果実の縦断面

 ハマゴウの葉の裏は灰白色をしていますが、それは、白い毛がビッシリと生えているからです。乾燥を防ぐ意味合いと砂のぶつかりから葉を保護する働きがあるのでしょう。
 果実は核果と呼ばれ、果皮は木化して硬く、4室からなり、4個の種子を含みます。
 果実を乾燥したものを蔓荊子(まんけいし)といい、強壮清涼剤、風邪頭痛に用いるとあります。


文献
長田武正. 1988. 検索入門野草図鑑 5.p108.保育社.
村田 源. 1989. 日本の野生植物 木本2.p214.平凡社.
柴田桂太. 1989. 資源植物事典.p611.北隆館.



 
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