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ジャノヒゲ Ophiopogon japonica (L. fil) Ker−Gawl.
                  (ユリ科 Liliaceae

学名は、日本の野生植物によりました。

 
 自宅の庭には、約2.3×.mの範囲にわたってジャノヒゲの大群落があります(図1)。
 葉が最大30cm程と長大なのでナガバジャノヒゲと思い込んでおりましたが、地下に横走する地下匐枝(ふくし)がはっきりしているので、「ジャノヒゲ」とするのが適切だと判断しました。

図1 ジャノヒゲは、庭の一角を占めて、びっしりと群落を作っている。(2009年1月8日)

 長い葉の陰で開花・結実するので目立たず、ほとんど年中緑の葉しか見えていませんが、冬の日、葉をどけてみると見事な種子を見ることができます。
 この果実のように見えるのは、じつは果実ではなく
種子です。ヤブラン属(ヤブラン、ヒメヤブランなど)やジャノヒゲ属(ノシラン、オオバジャノヒゲなど)の植物では、果皮(子房)は成熟の過程で破れてしまい、その後、種子は露出したまま成熟します。

図2 葉の茂みをかき分けると種子が見えてくる。果実のように見える種子が眼に鮮やかだ。(2009年1月7日)

図3 色鮮やかな種子(直径1cm弱)

図4 種子の断面

 普通の図鑑類には、「ジャノヒゲやヤブランで、果実のように見えるのは種子」ということが書いてあります。しかし、そう書いてあるからといって、理由も分からずに丸暗記するのでは進歩がありません。そこで、私なりに解説を試みてみます。

 ジャノヒゲの場合には、1つの花が1つの種子になるので、一見して種子とは気がつかないのですが、ヤブランの場合には、1花に複数の胚珠(胚珠が育つと種子になります)があって複数の種子ができますから分かりやすいので、先ずヤブランで説明いたします。
 ヤブランの子房は3室で、各室に2個の胚珠があるので、最多で6個の種子が1箇所、即ち花のあった位置に付くことになります。しかし、なかなか全部は育たず、1〜4個くらいしか熟しません。図6で四角く囲った箇所はそれぞれ、一つの花に由来する種子で、ほとんど発達しなかったものを含めて1〜4個の種子が見えています。

図5 ヤブランの花序。1箇所からいくつもの花が咲く。
図6 花柄(果柄)の先に1〜4個の種子ができている。種子を付けなかった花柄もたくさん見えている。

図7 1つの花に2個の種子ができた場合

図8 1つの花に4個の種子ができた場合

 しかし、花(というか雌しべ)がどう変化するかの過程を観察しないで、いきなり果実(じつは種子)を見たのでは分からないのでは? との疑問もありますね。
 そんなときの
判別方法を紹介致します。

 図9のサネカズラや図10のサルトリイバラを見て下さい。それぞれの粒の先端に「へそ」のような小さな突起が見えますね。この「へそ」のようなものは、雌しべの、特に花柱の残骸でしょう。花柱の残骸があるということは、雌しべのなれの果てということを示しています。1個の雌しべが1個の果実になりますから、この1粒1粒が果実だということになります。


図9 サネカズラの果実 図10 サルトリイバラの果実

 図11はヤブランの種子の断面で、分厚い種皮で包まれていますので、一見果実のように見えます。しかし、図12で見るように、表面には、「へそ」のような残骸がなく滑らかですね。「種子」だからです。図13のジャノヒゲも同様に種子です。この1粒1粒が種子なのです。
 「果実」か「種子」かを見分けるのには、
「花柱の残骸が付いているかどうかを見る」のも一つの方法です。

図11 ヤブランの種子

図12 ヤブランの種子 図13 ジャノヒゲの種子

 話をジャノヒゲに戻します。
 最初に「地下に横走する地下匐枝がある」と申しました。図14では、地下匐枝でつながった6本の地上茎が見えます。
図14 6本の地上茎が地下匐枝でつながっている。

図15 地下匐枝の節には鱗片葉が付いていますが、古くなると破損して、見えなくなってしまいます。

図16 この地下匐枝の節には鱗片葉がわずかに残っている。

図17 根の所々が膨らんでいる
 根は所々で膨らんでおり、資源植物事典によれば、「根にある塊を採り水洗して乾かしたものを小葉麦門冬(しょうようばくもんとう)と呼び、滋養強壮、鎮咳、きょ痰、利尿に効があるという。」

 花は葉の陰に隠れているので目立ちませんが7月頃に開花します。花柄はやや曲がり、花はうつむいて咲きます。

図18 ジャノヒゲの花序(2002年7月14日)

図19 ジャノヒゲの花 図20 ジャノヒゲの花。花被の一部をはがして見た。



オオバジャノヒゲ Ophiopogon planiscapus Nakai
                  (ユリ科 Liliaceae

学名は、日本の野生植物によりました。

 同属のオオバジャノヒゲは、最近は公園などでグラウンドカバーとして良く植栽されています。
 花序が葉と同じほどの高さになるので、ジャノヒゲと違って花はよく目立ちます。
 ジャノヒゲと比べて一見しての違いは、その葉の先端の形です。

図21 グラウンドカバーとして植え込まれたオオバジャノヒゲ(2004年6月26日)

図22 オオバジャノヒゲの花序。短い花柄をもった花が2〜3個ずつかたまって付く。

図23 オオバジャノヒゲの花

図24 オオバジャノヒゲの種子(未熟)

図25 オオバジャノヒゲの種子(未熟)のクローズアップ

 オオバジャノヒゲの種子も分かりやすい例です。
 花柄というのは一つの花を支える柄のことですから、この先に1個の雌しべと6個の雄しべをもつ図23のような1個の花がありました。
 1個の雌しべですから、1個の果実ができるはずですが、未熟のものを含めて6個も見えます。これはとりもなおさず、
「果皮(子房)が成熟の過程でなくなり、その後、種子が露出した」ということを表しています。

付録1:オオバジャノヒゲとジャノヒゲの識別点

 もちろん、一見して分かるのですが、具体的な決め手としては、葉の幅と先端の形です。

図26 オオバジャノヒゲの方が先端がずんぐりとしており、葉の幅も広い。どちらにも微細な鋸歯がある。上辺スケールの単位はmm。

付録2:根にある塊(小葉麦門冬)
 根の一部(皮層)が肥厚したもので、断面を見ると根の維管束が通っています。根に色素を吸収させて観察してみました。

図27 ジャノヒゲの根の一部が肥厚したもので、断面には根の維管束が通っている。

図28 根の肥厚部の横断面。維管束のところに強く色素が付着した。

文献
佐竹義輔. 1982. 日本の野生植物 2:23.平凡社.
柴田桂太 編. 1989. 増補改訂版 資源植物事典:856.北隆館.

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