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アオイゴケ Dichondra micrantha Urb.
            (ヒルガオ科 Convolvulaceae

学名は、naturplant:3301(勝山)によりました。
 
図1 植え込みの下でグラウンドカバーとして広がるアオイゴケ。

 石川県金沢市の中心街で、グラウンドカバーとして「アオイゴケ」風の植物が植え込んでありました。アオイゴケ自体は暖地の植物で、石川県にはありませんので、帰化植物図鑑にある「カロリナアオイゴケ」だと理解していました。
 2007年、私の属している帰化植物メーリングリストで、話題になり、どうやら「アオイゴケ」そのものであるとの感触を得ました。とはいえ、野生ではなく、園芸業者によって持ち込まれた外来種であることは間違いのないところです。栽培されているものですが、管理者から依頼された植物調査の調査地区にあるものなので、一部採取して観察しております。
 石川県に持ち込まれているということは、全国各地、読者の皆様のお近くにもあるかも知れません。「野生のアオイゴケがあった」と思ったら、園芸品あるいは逸出であるということがありますからお気をつけ下さい。

 はじめに、帰化植物メーリングリストで報告された勝山輝男氏の説を私なりの理解で、要約してみます。

 アオイゴケDichondra micrantha Urb.は世界の熱帯〜暖帯の庭や路傍の半裸地に生育する小型の多年草で、日本では千葉県以南に分布します。学名は長い間、ニュージーランドを基準産地とするDichondra repens J.R. Forst. et G.Forst.が用いられてきましたが、D. repensはオセアニア〜マレーシア地域に分布するもので、旧世界の熱帯〜暖帯に広く分布するものは、最近ではD. micranthaが用いられるようになっています。Flora of New Zealand, Vol.IV(Webb et al., 1988)によると、D. micrantha(アオイゴケ)の
葉の下面には伏した毛が密生しますが、上面は無毛または疎らに短毛が生える程度で、D.repansは葉の両面に伏した絹毛が同じ程度に密生することで区別できるそうです。
 カロリナアオイゴケD. carolinensisは北米東南部(テキサス〜アーカンサス〜バージニア以南)とバミューダ諸島、バハマ諸島に分布するもので、北米の古い植物誌ではアオイゴケと同様にD. repensが用いられていましたが、その後、D. repens var. carolinensis (Michx.) Choisyに変更され、最近では独立種D. carolinensisとして扱われています。
 
アオイゴケの花(果)柄は花時に葉柄の1/4-1/2長で、上部で曲がり、萼片の長さは幅の1.5-2倍で、果実は萼片よりも長い。一方、カロリナアオイゴケの花(果)柄は花時に葉柄の1/3-2/3長で、直立し、萼片の長さは幅の2-3倍あり、果実は萼片と同長または短い
 平凡社の日本の帰化植物(山崎,2003)のカロリナアオイゴケ(カロライナアオイゴケ)の記述は、前述した区別点には言及せず、葉がやや大きく、萼や果実に長い毛があることでアオイゴケと区別できるとしています。アオイゴケの萼や果実にも長い毛が密生しており、両者の区別点にはなりません。また、掲載されている写真のうち、
三重県鈴鹿市のものは萼片が幅広く、花柄も短く、明らかにアオイゴケと思います。

さらに、神奈川県植物誌 2001 のカロリナアオイゴケの図はアオイゴケである。
 確実にカロリナアオイゴケと同定できる標本や写真はまだ見ていません。日本産のカロリナアオイゴケとされている標本については、前述した違いに着目して再検討する必要がありそうです。
以上のことを基に、アオイゴケとの比較をまとめると、
 
1 花(果)柄は花時に葉柄の1/3−2/3長で、直立し、萼片の長さは幅の2-3倍あり、果実は萼片と同長または短い
カロリナアオイゴケ  
1 花(果)柄は花時に葉柄の1/4−1/2長で、上部で曲がり、萼片の長さは幅の1.5−2倍で、果実は萼片よりも長い
アオイゴケ  

となります。 

1 葉の下面には伏した毛が密生しますが、上面は無毛または疎らに短毛が生える
について検証してみましょう。

図2 葉の毛(下面)

図3 葉の毛(下面)

図4 葉の毛(上面)。毛が無く、多数の気孔が見える。

図5 葉の下面。毛の陰に気孔が見える。

図6 葉柄にはおおむね、下向きの毛が密生

 葉の下面には伏した毛が密生し(図2・3)、上面は無毛(図4)。
なお、上面には、気孔がびっしり見えています。普通の陸上植物では、気孔は上面には少なく、下面に多いものなのに、上面に気孔が多いのは奇異に感じました。念のため、下面も顕微鏡で丁寧に見たところ、毛に隠れていましたが、多数の気孔が見られました(図5)。
 葉柄には、おおむね、下向きの毛が密生しています。

2 アオイゴケの花(果)柄は花時に葉柄の1/4-1/2長で、上部で曲がり、萼片の長さは幅の1.5-2倍で、果実は萼片よりも長い
について検証してみましょう。
図7 果実。(最小目盛りが0.1mm)

図8 開花直後の花柄はまっすぐ。(2008年5月5日) 図9 次第に果柄は下へ曲がる。(2008年5月13日)

図10 花柄は下へ曲がる。

 葉柄の長さについては、様々な長さの葉があるので、それと花(果)柄の長さの比を比べることは困難です。また、萼片の長さと幅の比較も私にはできませんでした。しかし、果柄が曲がることと果実が萼片より長いことは、はっきり分かります。
 この点で、カロリナアオイゴケではないといえそうです。

3 三重県鈴鹿市のものは萼片が幅広く、花柄も短く、明らかにアオイゴケと思います。
についての検証


 日本の帰化植物(平凡社)のPL73の3 三重県鈴鹿市の花をよく見ると、萼片については確かに幅広です。果柄の長さについてはよく分かりません。しかし、萼片の先端をつなぐ円周と、花弁の先端をつなぐ円周とが、ほとんど重なるように見えます。
 一方、私のアオイゴケの花では、花弁の先端をつなぐ円周の方が明らかに大きく見えます。

図11 アオイゴケの萼片の先端をつなぐ円周と、花弁の先端をつなぐ円周

 この萼片の先端をつなぐ円周と、花弁の先端をつなぐ円周との違いが、両種(アオイゴケ、カロリナアオイゴケ)の違いを見分けるポイントになるものかどうかについては、不確かですが、もし、「両種の違い」として認めることができるとしたら、日本の帰化植物の花の写真が、「間違いである」と断ずることはできないでしょう。また、「両種の違い」として認めることができない形質なら、やはり、「間違いである」とすることはできないように思います。
 このことに関しては、観察例が少なく、あまりにも不確かです。本物のカロリナアオイゴケを観てからの話になることでしょう。情報を頂ければ幸いです。

 なお、アオイゴケの記述として、日本の野生植物 草本 合弁花類(平凡社)には「花冠裂片は、萼片より短い」とあり、新日本植物誌(至文堂)では、「花冠裂片は、萼片より少し長い、刮ハの分果は、萼とほぼ同長である。」とあり、これがまた悩ましいところです。
 いろいろな誤解があって、様々な記述があるのでしょうが、私としては、勝山説を採用して、「アオイゴケ」として整理してみたものです。

図12 花は黄白色で、直径5mmくらい。地表近くで開花するので、よほど気をつけていないと花には気がつかない。(2008年5月4日)

mizuaoiの写真館(ここ)では、この花を35倍に拡大した画像で見ることができます。

2008年5月7日 開花始め 5月8日 花粉が出だした 5月9日 花粉が出ている
5月11日 花粉が出ている 5月11日 横から観た 5月13日 雄しべが枯れた
図13 1例ではあるが、7日間は咲いていたと見ることができる。

 花は黄白色で、直径は5mmくらいですが、すぐに花弁が外へ反り返るので、4mmくらいに見えることもあります。
 花は、何日くらい咲いているのでしょうか。同じ花で追跡してみたところ、7日間は咲いていたと見ることができそうです。

図14 果実は始め有毛
図15 果実は次第に無毛となる。

図16 左は種子、右は果皮。単位は0.1mm。

文献
村田 源. 1981. 日本の野生植物 草本 3:58.平凡社.
大井次三郎. 1983. 新日本植物誌 顕花編:1253.至文堂.
山崎 敬. 2000. 日本の帰化植物:PL73.p.161. 平凡社.
勝山輝男. 2007. 帰化植物ML(naturplant:3301)カロリナアオイゴケ.2007.9.12発信.

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花のアイコンは、Flower Icons Site(現在URL不明)からお借りしたものです。

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