黒装束団の生きる道
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うすしお味ポテチにロックオン。
距離は若干遠いかもしれないが、チャレンジしてみる価値はある。なんたって目標となる食物が自分の大好物だからだ。ポテチだけでもたまらないのに、それに塩を混ぜるなんて。人間の味覚のセンスには驚かされるばかりだが、それを利用しているオレたちはなんと利口な生き物なんだ。とある遠い親戚にも言ってやりたいね。朽ち木なんかよりよっぽど美味いぞと。
今は幸い、大胆に開けられたポテチの袋の周りには誰もいない。またとないチャンスだ。腹をくくり、
飛び立つ。ブゥーンと不快でマヌケな音を立てながら、目的地まであと三メートル、二メートルと距離を縮めていく。塩っ気のある匂いが自分を急がせる。もう少し、もう少し――――――。
と、皮肉にもあと一メートルをきった所で翅が疲れてきた。意識しているよりも高度が徐々に下がっていき、いすの足に正面衝突して床に垂直落下した。だが、痛くもかゆくもない。こんなのは日常茶飯事だ。
もう一度翅を広げようとしたその時、家の主が姿を現してぎくりとし、近くにある冷蔵庫の下に身をひそめる。くそ、もうちょっとだったのに。
人間なんてチョロいチョロいオレらのスピードにはしょせんやつらの動きなど止まって見えるねとかほざいてるアホどもは、人間なんて気にせずにポテチの風呂にダイブしていくが、自分は決してそうではなく、隙があるときこそ安全かつ要領よく食物をあされるということを知っていた。隙ができるのを待っていたら人間がそこにある食物をすべて平らげてしまう恐れもあるが、命を捨ててまでポテチを食いたいとも思わない。
じっとまたのチャンスをうかがっていると、急に円柱状の容器のような物がこちらに転がり込んできた。何が起きたかわからないでいると、急に人間の手かと思われるものに裏拳をお見舞いされた。
そしてふと次の瞬間、人間を目が合ってしまった。裏拳に驚いて、つい冷蔵庫から出てしまったのだ。
スリッパで叩くか? そんなもんで叩かれたってオレの体は、
ざくり。
――――切られた。あたま切られた。自分の第二の脳がそう言っている。
「あ、おかあさーん! さっきね、冷蔵庫の下にペンのキャップが入っちゃったから手で探ったらね、下から黒いのが出てきたんだよ。だからボクね、近くにあった包丁で切ったの」
そんな声が聞こえる。だが、生きている自分はもうそこにはいなかった。
「――で、胴体はどこなの?」
「あ、あれ――――さっき頭を切り落としたはずなのに、胴体が――――あれ?」
結局自分たちはこんな運命なのかと思う。
どうせなら、ポテチを食ってから逝きたかった。何ふり構わず特攻するアホどもが、少しばかりうらやましく思えてきてしまう。
三億年前から生き続けている「生きている化石」と呼ばれた自分たちが、人間に例えれば新幹線よりも早く動ける脚力をもつ自分たちが、顔がつぶされても胴体だけで一週間生きれてメスならその間に卵を生みまくりさらなる繁殖を手助けする自分たちが、人間たちに好かれる日は来るのだろうか。
いや、おそらく一部をマニアはともかくとして、そんな日は来ないに等しい。
ならば、とことん嫌われてやろう。そんな自棄すら起こしたくなる。
人間と黒装束団の戦争は終わらない。人間が絶滅するその日まで――。
(終わり)
---------------- あとがき ----------------
これは部活で、「A4一枚」という制限でなおかつ「ラブコメorちょっといい話」というテーマで書いた超短編小説です。
言い訳をさせていただくと、俺は短編が苦手なクチでありまして、やはり短い中でうまくまとめなければならないということで、思いついた「長編ならできる」ネタの候補が次々と崩れていき、最終的に行き着いたのがこのネタでした。行き着いたネタがゴキブリネタって、いったいどういう思考回路なんでしょうね(苦笑)。
もう一つ言い訳させていただくと、提出期限が迫っていたせいで苦し紛れに出したこともあったので、まったくテーマに沿っていない内容になってしまいました……ということもあってか、周りの評価も微妙でした……。
実はこれをする前には、するつもりだったお蔵入りのネタがありまして、それが「人間と動物の恋」というものでした。こちらの方がよっぽどラブコメらしかったんですよねー。
でも、人間の青年とメス犬が親密な関係に……というこのシュールな内容のせいで断念(苦笑)。そしてゴキブリに(笑)。
ま、次からはきちんとまともな内容を書こうと思います……。では。
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